高橋が考える、会社設立のモデルケース_vol.2

去る10月1日に、商業・法人登記の案件を、何件か登記申請させていただきました。

その中で、「合同会社の設立」がございまして、個人的には、中小企業法務における、一つのモデルケースになると思いましたので、ご紹介させていただきます。

本件クライアントと初めてお会いしたのは、登記申請の2カ月ほど前のことでした。(クソ暑い日でした…)

公認会計士の先生から「株式会社を設立しようとしている方がいて、しかもご自身で登記申請しようとして、株式会社について相当勉強されている。しかし、やはり『専門家に相談に乗ってほしい』とのことなので、お会いしていただけないか?」とのことで、ご相談に乗らせていただきました。

実際にクライアントにお会いしたとき、株式会社の仕組みをひととおり説明(おさらい)させていただいた後、「ちなみに合同会社っていう便利な制度がございまして…」という具合に、株式会社との対比で、特徴的な部分、メリット・デメリットについて、説明させていただきました。

その結果、「そういうことなら、ぜひ合同会社でお願いします!」との回答をいただき、既に作成いただいていた株式会社の定款案を踏まえ、合同会社の定款を新たに作成させていただきました。

これは、本当に嬉しいリアクションでした。

株式会社の仕組みと異なる部分が多いので、合同会社設立における注意点は多々あるところではございますが、我が国中小企業の実情に最も適しているのは、私は、合同会社であると確信しております。

(株式会社を名乗っている割に、合同会社を運営しているような感覚の経営者の方が、何と多いことか…)

もちろん、合同会社を選択すべきでない場合というのはある訳ですが、その場合を除いて、大多数の場合は、一考の価値はあると考えております。

その一番の理由は、何と言っても「人的コスト」です。

株式会社というのは、(誤解を恐れずに申し上げますと)一定の法定手続が義務付けられるからこそ、取引先をはじめ、取引社会からは一定の信用を得られるのだと思います。

逆に、適切な法定手続がとられていない場合、株式会社とは名ばかりであり、場合によっては信用を失うきっかけにすらなり得るのだと思います。

そして、適切に法定手続を踏むためには、それを任せられる人が必要になる訳で、株式会社のバックヤード業務にはそれなりの人的コストが発生することになります。

一方、合同会社においては、そもそも法定手続が大幅に簡略化されているので、堂々と、バックヤード業務を「サボる」ことが可能となります。すなわち、合同会社は、基本的には、中小企業とって非常に運用しやすいビークルであるといえます。

必要であれば、合同会社から株式会社へ組織変更することも可能である以上、個人的には、「法人設立の時には、無理をせずに、身の丈に合った会社形態を選んだ方がよいのではないか?」ということを、私は伝え続けたいと考えております。

そんな風に、「なんとなく株式会社を設立するような風潮」を食い止め、起業家が、後々後悔しないようなスタートを切ってほしい、と願っております。

もちろん、それらも理解されたうえで、株式会社を設立されるのであれば、私は全力で応援したいと考えております。

とどのつまり、「本当にそれでいいんですか?」という検討要素を、クライアントに対して適切に提示し続けられる存在でありたい、と私は考えております。