事例紹介2~Squeeze Out_スクイーズアウト~

【Squeeze Out_スクイーズアウト】

「株主整理」

 

それは、親戚同士が株主である、いわゆる「同族会社」では、割とよくある話ではないでしょうか。

 

今回は、そんな「同族会社」で発生した課題と、その克服方法について簡単にご紹介させていただきます。
(事例は一部変更しております。)


 

【経緯・課題】

「連絡がとれない株主がいて困っている」とのお悩みを抱えるお客様を、弁護士よりご紹介いただきました。

 

お客様&弁護士とミーティングし経緯をお伺いしていくと、会社は創業50年程度の中小企業で、いわゆる「同族会社」の株式会社であり、株主5名は全員親戚どうし。
相続をきっかけとして先代の株式を取得した相続人たちが、新たな株主となったのでした。

 

ところが、その後、株主2名とは絶縁状態となり、連絡をしても全く反応がない模様。

 

当初は、株主間売買に基づく株式譲渡を試みたものの、それらの連絡もまったくできず、お客様は困っていたとのこと。

 

株式会社における重要な意思決定は、原則として株主総会で行うので、「株主と連絡がつかない」ということは、会社としての意思決定に支障を来すため、非常に重大な課題といえます。

 

【解決】

幸い、お客様単独で総議決権の3分の2程度の議決権を保有されていたので、会社法の手続きに沿って「無理やり株主整理を進めよう」ということで合意しました。

 

お客様のご意向としては、以下の通りでした。
1.会社経営において非常に面倒なので、連絡がとれない株主2名を追い出したい。
2.上記以外の(お客様以外の)株主2名も「今後会社のことにかかわりたくはない」とのご意向なので、当該株主2名からも株式を取得したい(結果として、ご自身が100%株主となる目論見。)。
3.取引先との関係もあるので、登記事項はなるべく変えたくない(見栄えはよくしておきたい)。

 

会社法上「株主から株式を無理やり奪い取る方法」はいくつか選択肢があり、それらをお客様に説明のうえ、上記ご意向も踏まえ検討を行いました。

その結果、今回は以下の方法を選択いただくことで方針が決まりました。
1.株券発行会社の定めの廃止(当該会社はいわゆる「株券発行会社」でした。)
2.種類株式発行会社への変更(=種類株式の設定)
3.既存普通株式の種類株式化(=全部取得条項付種類株式の設定)
4.全部取得条項付種類株式の取得(会社法171条1項)(=会社が全株主から株式を無理やり奪ってしまう制度)
5.総数引受契約による募集株式の発行(=100%株主を生み出すための増資。ただし、新株発行は行わず、すべて自己株式を交付。)
6.種類株式の廃止(=登記事項を元に戻す手続)

 

上記一連の手続は、「株主保護を図りながらも株主整理を進める」ということで、非常に面倒ではありますが、会社の将来を考えると非常に有意義な手続といえます。

 

上記手続に反対する株主には、株式買取請求権等の様々な権利が与えられており、その「反対を主張する権利」を保護しながら株主整理を進める必要がございます。
ですので、上記手続においては登記申請以外にも、その前提として株主に対する各種通知や会社情報の開示(事前開示・事後開示)が必要となってまいります。

 

それらのスケジューリング、書類作成、助言も含め、お手伝いさせていただきました。

 

無事すべての手続が終わり、上記6の登記審査が完了したときには、お客様より大変お喜びいただきました。

司法書士冥利に尽きるお仕事ができたかなと思います。

 

【特に工夫した点】

上記1から6のうち、今回とくに工夫した点は以下の通りです。

1.全部取得条項付種類株式の取得に先立ち「株券発行会社の定め」を廃止したこと

2.募集株式の発行の際に新株発行は行わず、自己株式を交付したこと

 

上記1は、いわゆる「株券提供公告(会社法219条1項3号)」を行わずに全部取得条項付種類株式の取得を行うために、ご案内差し上げました。

上記2は、新株発行をすると「資本金の額が増えてしまう」ため、自己株式を交付することでそれを回避しました。

資本金の額が増えるということは登記事項の変更が生じてしまいお客様のご意向に反しますし、また、登録免許税も発生してしまい合理的ではないと考え、お客様にご提案差し上げました。